2006 Sept 21-29 独墺旅行 ライン川下り
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Burg Katz カッツ城
「ドイツ古城の主になる。廃墟買取りホテル開業」
朝日新聞(夕刊)2007.03.13
悠然と流れるライン川を屋根から見下ろす。ハイネの詩で知られるドイツ・ローレライの岩
と遊歩道でつながった古城は、14世紀に築いた伯爵の名前から、「ブルクカッツ(ネコ城)」
と呼ばれる。
日本のビジュアル系ミュージシャンも撮影に訪れる。よく見ると大きな塔は上部が失われ
ている。「ナポレオンの攻撃で焼かれたままです」と小杉恵さん(70)。
企業のコンサルタントをしていた18年前、不動産を処分して廃墟同然だった城を当時の
西ドイツ政府から買った。日本と往復しながら、月の半分をここで過ごす。
本館玄関では、イタリアの作家の手になる体長180cmのネコの彫刻が訪問客を迎える。
数々の紋章が天井を飾り、背もたれ付きのいす20脚がテーブルに並ぶ「騎士の間」、
30平方mの浴室を備えた「伯爵の間」もある。
人口1700人の市の経済は、ライン観光船や、レストランなど観光が支える。地元では
ネコ城に集客拠点のホテルを期待した。許可を得て93年に開業したが、客室が10室
しかない。そこで市を交えた地元の総意として増築を計画した。
95年、許可権限を持つ州文化財保護局と協議に入った。地元が望む建設地は堀の跡。
城の敷地より低く景観を損なわないと考えられたからだが、当局は首を縦に振らない。
「堀だったと分からなくなる」
城を含む一帯は05年、世界遺産登録が正式に決まり、協議は途絶え、増築の動き
はしぼんだ。
小杉さんがネコ城を手に入れてまず手をつけたのは梁の強化だ。
木造の「合わせ梁」を応用し、老朽化した鋼製の梁に新しい鋼材を抱かせて補強した。
補修のための図面は自らひいた。給排水の配管工事は石の壁に手を焼いたという。
「設計図が残っておらず、掘ってみたら厚さが10mの壁もあった」補修には購入額
の3倍の約10億円、家具に約2億円を費やした。よみがえらせた城が世界遺産
になったいま、評価額は跳ね上がったという。